農地の有効活用方法の一つとして、農業と太陽光発電を組み合わせた、ソーラーシェアリングが注目されています。
ソーラーシェアリングを導入したいと思ったら、具体的にどんな行動をすればいいのか、またどう活用していけばいいのか、ポイントを押さえて解説していきます。
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ソーラーシェアリングとは?
ソーラーシェアリングとは、営農型太陽光発電のことで、その名の通り農業を経営して農地を利用しながら、太陽光を利用して発電して収益化していくことを指します。
農地の上に支柱を立てて台を設置し、太陽光パネルを敷くことで太陽光発電ができるようにします。作物が成長するためには日光が必要ですが、必ずしも日が出ている時間分すべて当たっている必要はありません。むしろ光が強すぎると、枯れてしまうこともあります(光飽和点)。その作物に必要な強度と時間の日照を確保すれば、問題なく育つのです。
うまく太陽光パネルが設置できれば、農地のうち使用していない空間を有効活用して、労力少なく収益が見込める新しい取り組みとなります。
作物への日照と太陽光パネルへの日射の両方を満たすように調節して、作物からの農業収入、そして発電した電力の売却益を得るのがソーラーシェアリングなのです。
使用している農地の有効活用ができるだけではなく、使用できていない荒廃農地の再生アイディアとしても考えられています。
ソーラーシェアリングの普及度合い
ソーラーシェアリングは新しい取り組みですが、どれだけの人が行っているでしょうか?
農林水産省のデータによると、2020年までに3474件、872.7haの広さでソーラーシェアリング実施のための農地転用が行われています。
年々農地転用の申請件数は多くなってきていて、注目度が高まっているものの、まだ普及したとは言えない状況です。普及が伸び悩んでいる原因の一つには、電気の買取価格が下落していることが考えられます。
FIT制度とは、太陽光発電パネルを設置してから10年間、電気を一定の価格で買い取る制度です。買取価格は毎年変わりますが、再生可能エネルギーの普及とともに年々下がり続けているのが現状です。
制度開始当初の2009年は、10kW未満の買取価格が1kWhあたり48円だったところ、2022年度は17円まで下がっています。
なお、10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電には、2020年度から自家消費型の地域活用要件を設定することとされています。
参考:資源エネルギー庁
ソーラーシェアリングのメリット・デメリット
ソーラーシェアリングの導入を考えていく前に、メリット・デメリットを理解してその特性を掴んでおきましょう。それぞれ詳しく紹介します。
ソーラーシェアリングのメリット
①現在使用している農地をフル活用できる
ソーラーシェアリングでは、今使用している農地の上に設置するため、太陽光発電パネルを設置する場所を新たに確保する必要がありません。
また、パネルの設置で農作業がしにくいというような悪影響は出にくく、むしろできた日陰で作業のしやすさが上がるという例もあります。
②農業以外の収入源確保になる
農業は気候や災害に左右されやすく、収入が安定しにくい点で困難があります。しかし、発電で得られる収入もあれば2本支えの収入源となり、安定化に貢献できるでしょう。
また、発電した電力を売るだけではなく、農業で使用することもできます。農業では、ガソリンなどの燃料だけでなく、電気を使用する場面もあります。例えばハウス栽培での温度調節や水耕栽培のポンプ、電力を使用する農機具など、活用場面はさまざまです。
電力を自己で賄えるならば、大幅な電気代の節約にもなります。
③ 使用していない農地の有効活用
有効活用できていない農地がある場合、発電パネルの設置をすれば無駄になりません。荒廃農地や遊休農地となり、そのまま放置してしまえば再生は簡単ではありません。付随して害獣発生など問題も発生する可能性があります。
そうならないためにも、太陽光パネルを設置し、あわせて適切なメンテナンスを行なっていけば、土地が荒れ果ててしまうことを防げるでしょう。
ソーラーシェアリングのデメリット
①初期費用が高額
ソーラーシェアリングを始めるに当たっては、太陽光パネルの設置が不可欠です。1kW発電するために必要な太陽光パネルを設置するための費用として、およそ25万円程度かかると言われています。50kW発電するためには1250万円の投資が必要になります。
太陽光パネルには設置台が必須なので、そのための資材や、メンテナンスの際に足場を組むなどの費用がかかることにも注意が必要です。
設置コストと発電による収入のバランスがうまく取れるように計算して、損失とならないように導入を検討しなくてはなりません。
ソーラーシェアリングの導入方法(始め方)
ソーラーシェアリングを導入するには、まず農地転用の手続きを行います。農地転用とは、農作物の栽培にしか使えない「農地」という区分を、農業委員会の許可を経て変更することです。
ソーラーシェアリングをするために太陽光パネルを設置しますが、基本的にはその支柱の基礎部分を農地転用する必要があるのです。なお、農地全体を転用して設置する方式もあります。
ソーラーシェアリングの農地転用は、通常の農地転用とは異なる部分があります。申請についてはあらかじめ流れを知った上で行うと良いでしょう。導入するために必要な手順を紹介します。
①発電設備の設置方法を決めて、転用許可の条件を満たす
農地転用について考え始める前に、まずはどのような形でソーラーシェアリングを行うかを決めます。
栽培している作物の上に設置するのか、使用していない農地の上に設置するのかで農地転用が許可される期間が変わります。ソーラーシェアリングとしてどのような運用をしていくか考えるためにも、あらかじめ許可期間を把握しておきましょう。
以下の条件のいずれかに該当すると、農地の一時転用許可期間は10年以内となります。以下の条件に当てはまらなければ、3年以内の許可期間となります。
● 認定農業者等の担い⼿が下部の農地で営農を⾏う場合
● 荒廃農地を活⽤する場合
● 第2種農地⼜は第3種農地を活⽤する場合
さらに、許可を得るためには以下の条件を満たしていなくてはなりません。
● 下部の農地での営農の適切な継続が確実か
● 農作物の⽣育に適した⽇照量を保つための設計であるか
● 効率的な農業機械等の利⽤が可能な⾼さ(最低地上⾼2m以上)であるか
● 周辺農地の効率的利⽤等に⽀障がない位置に設置されているか 等
上記を満たしつつ、きちんと農作物を育てることができていれば、転用許可の再許可を得ることができるため、長期間のソーラーシェアリング運用が可能となります。
②転用許可を申請する
申請の前には、ガイドラインに沿った事業計画を作成し、さらに電力会社に買取してもらうために提携の申し込みをしなくてはなりません。
その事前準備を行なった後に、農業委員会に農地の一時転用許可申請書を提出します。申請の際には、条件を満たすことを証明するために、営農に悪影響が出ないことが分かるよう設置図やデータを用いた資料が必要となります。
ソーラーシェアリングに適した作物は?
ソーラーシェアリングを行うと、どうしても日照時間が減り、これまで栽培してきた作物が適さなくなるおそれがあります。特に多くの日照時間あるいは光の強度が必要な(光飽和点が高い)野菜を育てていた場合、変更を余儀なくされることもあるでしょう。
光飽和点が低い作物、例えば半陰性植物や陰生植物へと転向すると、ソーラーシェアリングを行いながらも適切な営農が可能となります。
例えば以下のような作物が、ソーラーシェアリングに向いていると言えます。
穀物:米、麦
野菜:サトイモ、サツマイモ、ジャガイモ、キャベツ、大豆、レタス、みつば、ニラ、ショウガ、ミョウガ、ねぎ、アスパラ、ニンニク、小松菜 など
果物:ブドウ、モモ、梨、みかん、ブルーベリー など
その他:お茶、牧草 など
ソーラーシェアリングで育てる作物に制限はありません。しかし一方で、適切な営農が継続されるのが前提であるため、以下の場合には慎重な判断が行われることがあります。
① 耕作者がこれまで一度も栽培したことがない農作物の栽培を計画している場合
② 当該地域で栽培されていない農作物の栽培を計画している場合
参考:営農型発電設備の実務用Q&A(営農型発電設備の設置者向け)
実際のソーラーシェアリングの事例をチェック
水田でスマート農業化を実現した事例
ソーラーシェアリングとスマート農業を合わせ、水田で実践した事例です。太陽光パネルの監視のためのICT技術を活用して、スマート農業(ドローンや水門開閉)に役立てた事例です。収量安定に貢献しています。
お茶を継続栽培しながらソーラーシェアリングを実践した事例
この企業は被覆栽培でお茶の栽培を行なっていたため、太陽光パネルを敷いても継続してお茶の栽培に成功した事例です。
また、お茶の木は定期的に植え替えが必要ですが、その改植・新植を行う期間も売電による収益が確保できるようになりました。
ブルーベリーを植えてソーラーシェアリングを開始した事例
エネルギーと食料問題への関心から、両立するための取り組みとしてソーラーシェアリングに注目した企業の事例があります。観光やレストランでの提供を考えて、ブルーベリーで実践しました。
参考:農林水産省|営農型太陽光発電について
ソーラーシェアリングに合わせて農機具も見直そう!
ソーラーシェアリングを行うと、土地の有効活用をしながら電気代の節約になるだけでなく、余った電力を活用して第二の収入源とすることもできます。
ソーラーシェアリングができるように農地を整備するとき、また設置した後に効率的な営農をしていくために、農機具を活用していくと良いでしょう。
新品だと高額になりがちですが、中古で購入することで費用を抑えつつ、効率化を目指せます。
あぐり家で欲しい中古農機具があるか、チェックしてみましょう。
株式会社K・ライズホールディングス 営業本部
桑原 翔
(Kuwahara Tsubasa)
1987年4月生まれ、趣味はパソコンいじりと音楽全般。専門商社の営業職とSaaS(クラウド)のカスタマーサクセスやマーケティング業務を経て、K・ライズホールディングスに入社。営業本部所属で、主に「國丸」「あぐり家」「RiZ」を担当し、各事業のサイトのディレクションやオンラインマーケティングのほか、オフラインマーケティングを担当。