果樹栽培において、剪定は欠かせない作業です。しかし、剪定後の切り口をそのまま放置すると、病気や害虫の侵入を招く恐れがあります。そこで重要となるのが「癒合剤」の使用です。
癒合剤は、樹木の回復を促進する重要な役割を果たします。癒合剤の適切な使用方法を知れば、より健康な果樹栽培が可能になるでしょう。
本記事では、主に果樹農家の方々に向けて、果樹栽培の質を向上させるために癒合剤の特徴や使い方、注意点などを詳しく解説します。
癒合剤とは
癒合剤とは、剪定後の切り口などに塗布する特殊な薬剤です。主な成分は、樹脂やワックス、殺菌剤などで、切り口の保護や樹木の自然な回復を助ける働きがあります。癒合剤の特徴や、使用方法などを詳しく説明します。
癒合剤の読み方と特徴
癒合剤は、「ゆごうざい」と読み、樹木の健康管理に欠かせないアイテムです。「癒合」とは、傷が自然に治るという意味があります。癒合剤は、成分により効果や特徴が異なりますが、主な特徴は、以下のとおりです。
防水性:雨水や湿気の侵入を防ぐ
殺菌効果:病害虫の侵入を防ぐ
柔軟性:樹木の成長に合わせ伸縮する
耐久性:長期間にわたって効果を維持する
通気性:樹木の呼吸を妨げない
無毒性:果実や環境に悪影響を与えない
このように癒合剤は、剪定後の樹木を効果的に保護、外部からの病害虫の侵入を防ぐ、健康な成長を促進するなど、多くの特徴を持ちます。必要に応じて、環境に配慮した製品など、用途に応じた形状や成分を選びます。
癒合剤の用途と役割、効果
癒合剤の主な用途は、果樹や庭木の剪定後の切り口の保護です。また、接木の際に使用したり、台風や強風、大雪などで枝が損傷した場合などにも使用します。そのほか幹の割れ目や傷の保護などにも使用されます。その役割と効果は以下の通りです。
病害虫の侵入防止:切り口からの病害虫の侵入防止、樹木の病気を予防します。
乾燥防止:切り口からの水分蒸発を抑え、樹木の乾燥を防ぎます。樹木の乾燥を防ぐことで、樹の成長と果実の品質維持が期待できます。
防腐・防カビ:防腐・防カビ成分が含まれているため、傷口の腐敗やカビの発生を抑えます。
癒合促進:樹木の自然な回復を助け、傷の治りを促進します。癒合剤に含まれる治癒促進成分が傷口の回復を早め、樹木の成長や生産性に悪影響を与えにくくします。
癒合剤は、果樹以外にも、庭木や街路樹など、さまざまな樹木の管理に使用され、観葉植物にも使用可能です。小さな切り口には不要な場合が多いですが、大型の観葉植物で太い枝を剪定する場合は、癒合剤の使用をおすすめします。
癒合剤を使うタイミング
癒合剤は、主に選定直後のタイミングで使用すると効果的です。
剪定によってできた切り口は、病害虫の侵入経路になりやすいため、剪定後すぐの塗布が理想です。特に、病気にかかりやすい樹木の剪定後は、傷口から感染しやすいため、細心の注意が必要です。
また、幹の割れ目や傷を受けた時も大きな効果があります。
台風や強風、大雪などで枝が折れた場合は、早期に癒合剤を塗布することで、傷口を保護して、樹木の回復を早めます。
このほかにも、特定の病害虫が発生した時や、病害虫の発生しやすい時期の前に使用するなど予防的に使用します。
癒合剤の塗り方
癒合剤の正しい塗り方としては、まずゴミやホコリを取り除き、切り口を清潔にし、乾いた状態にします。必要に応じて消毒用アルコールで拭き取りましょう。
癒合剤は、チューブタイプならそのまま塗布できますが、缶タイプの場合はハケを使用します。塗布する場合は、切り口全体に均一になるように薄く塗ります。癒合剤は塗りすぎると逆効果になる場合があるので、薄く均一になるよう塗ることが重要です。
塗布後は、完全に乾くまで触れないようにします。大きな切り口や特に保護が必要な部分には、24時間後に重ね塗りする場合もあります。また、気温や湿度によっては、乾燥時間が変わるので天候に注意をはらいましょう。
癒合剤をはがすとき
癒合剤は自然にはがれ落ちるので、積極的にはがす必要はありません。しかし、新しい芽や枝が出てきた場合は、樹木の自然な成長を促すためにはがしてもよいでしょう。また、カビや変色がみられる場合、樹皮が癒合剤を押し上げてきた場合などは、はがすことを検討します。
はがす際は、樹皮を傷つけないように注意深く行い、専用のへらや、柔らかいブラシを使用しましょう。完全にはがれない場合は、無理にはがさず、自然にはがれ落ちるまで待ちます。
はがした後に傷が完全に癒えていない場合は、再度癒合剤を塗ります。定期的に樹木や癒合剤の状態チェックをし、必要に応じてメンテナンスを行うのが良いでしょう。
癒合剤の代用となるもの
癒合剤の代用品としていくつか使われているものもありますが、本物ほどの効果は期待できません。例えば木工用ボンドやペンキは、防水性はありますが、殺菌効果がなく樹木の呼吸を妨げる場合があります。さらにペンキは、有害な化学物質が含まれている可能性があり、注意が必要です。
墨汁は多少の殺菌効果がありますが、乾燥すると割れやすく、保護効果が低下します。粘土は昔ながらの方法で、保護効果は多少あるものの雨で流されやすく、長期的な保護には向きません。
ほかにもアルミホイルや蜜蝋などもありますが、殺菌効果はありません。代用品は緊急時の一時的な対処方法と考えましょう。
癒合剤のおすすめ
癒合剤のおすすめの商品を3製品を紹介します。
トップジンMペースト:殺菌効果が高く、果樹農家に人気です。特にモモやナシなど、病気にかかりやすい果樹に適しています。耐久性が高く、1回で長期間の保護が可能です。
カルスメイト:乾きが早く、多くの剪定を短時間で行う必要がある大規模農園で重宝されます。半透明なので、傷の回復過程をチェックしやすいメリットがあります。
バッチレート:長期間の保護効果があります。耐水性が高く、紫外線による劣化が少ないので、雨の多い地域でも日当たりの良い場所でも安心して使用できます。
これらの製品は、使用目的や樹種、気候条件に合わせて選択するとよいでしょう。
癒合剤の効果を高めるためには
癒合剤の効果を高めるには、用途に合わせた製品を選ぶことが重要です。果樹用、庭木用、防腐効果があるものなど、目的に合った製品を選びましょう。
剪定は、枝の分岐点より高い位置で、適切な角度で行います。また、雨の日や、湿度の高い日は、なるべく避け、乾燥しやすい環境で塗布しましょう。傷口を清潔にし、乾燥させることで、病害虫の発生を最小限に抑えられるため、効果が高まります。
剪定時期は、樹液の流れが少ない時期に行うと効果が高まります。癒合剤を効果的に使用すれば、果樹の健康的な成長を促進し、病害虫から守ることができます。
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株式会社K・ライズホールディングス 営業本部
桑原 翔
(Kuwahara Tsubasa)
1987年4月生まれ、趣味はパソコンいじりと音楽全般。専門商社の営業職とSaaS(クラウド)のカスタマーサクセスやマーケティング業務を経て、K・ライズホールディングスに入社。営業本部所属で、主に「國丸」「あぐり家」「RiZ」を担当し、各事業のサイトのディレクションやオンラインマーケティングのほか、オフラインマーケティングを担当。