トラクターを公道で走らせるためには免許が必要なのをご存じですか?
2019年4月の制度改正によりトラクターは作業機を付けて公道を走ることができるようになりました。しかし、運転する車種や場所によって必要な免許の有無は異なり、間違えると法律違反になりかねません。
あいまいな知識のまま走行するのではなく、必要な免許をしっかりと理解してから運転しましょう。この記事にはトラクターの運転に必要な免許のほか、チェックポイントや費用についても分かりやすくまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
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トラクターの運転に必要な免許の種類
所有するトラクターによって必要な免許は異なります。それぞれの免許について詳しく説明する前に、まずは免許の種類別に運転可能なトラクターの条件を確認しましょう。
・運転免許は不要
私有地を走行する場合
・小型特殊免許または普通免許が必要
全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下(安全キャブや安全フレーム付きは2.8m以下)、最高速度15km/h以下の条件を全て満たした場合
・大型特殊免許または農耕車限定免許
全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、最高速度15km/h以下の条件をひとつでも上回る場合
・けん引免許
車両総重量750kgを超える大型車両をけん引する場合
・大型・中型免許
大型車両を乗せて運転する場合
特に小型特殊免許は、ひとつでも条件を満たさない場合は大型特殊免許が必要になるため注意が必要です。改めて運転するトラクターの種類を確認しましょう。
運転免許がいらない「私有地」とは?
私有地でトラクターを運転する場合、運転免許は不要ですが、そもそも「私有地」とは個人が所有する土地を指します。個人所有の敷地を少しでも出て農地に移動する際は、その距離に関わらず免許が必要になります。
公道と私有地の違いは、国や地方公共団体が管理するか、個人で管理するかです。また、農道は広域農道と生活農道がありますが、どちらも運転免許が必要です。
また、運転免許が不要な私有地を運転する場合や、運転をせず所有だけしていても、小型特殊自動車にはナンバーを取り付けることが義務付けられているので注意が必要です。なぜならナンバープレートは、“運転”ではなく“課税”のための標識だからです。トラクターは、所持しているだけで軽自動車税の課税対象となります。
普通免許・小型特殊免許・大型特殊免許…必要なのはどれ?
【注意】小型特殊”免許”と小型特殊”自動車”の違い
トラクターの運転に必要な免許には小型特殊免許と大型特殊免許がありますが、小型特殊“免許”は、小型特殊“自動車”と混同されやすいので注意が必要です。小型特殊自動車に分類されるからといって、小型特殊免許で運転できるとは限りません。
・小型特殊自動車
道路運送車両法における車両区分。農耕用車両の場合は、大きさや総排気量に制限はなく最高速度35km/h未満のものが該当する。
・小型特殊免許
道路交通法における免許区分。全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、最高速度15km/h以下の条件すべてに当てはまるものだけが運転できる。
このように、道路運送車両法では小型特殊自動車に分類される農耕車両も「道路交通法」では大型特殊自動車免許が必要な場合があります。全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、最高速度15km/h以下の条件をひとつでも上回ると、たとえ最高速度35km未満の小型特殊自動車でも大型特殊免許が必要になります。
農業者に便利な「大型特殊免許(農耕車限定)」とは
大型特殊免許(農耕車限定)は、トラクターなどの農耕車の運転が可能な免許です。運転免許証には、条件として農耕車に限定されていることが記載されますが、農耕車以外の大型車両を運転しない人にとっては十分と言えます。
大型特殊免許で運転できる車両には、クレーン車やブルドーザーといった非常に大型のものも含まれます。農業者にはそこまでの範囲は必要ないことがほとんどのため、免許取得方法の幅が広い農耕者限定をおすすめします。
「小型特殊免許」は普通免許で賄える
小型特殊免許は、普通自動車免許を取得していれば新たに取得する必要はありません。普通自動車免許を所持すると、普通自動車(AT車かMT車)、原動機付自転車、小型特殊自動車を運転することができます。
ただし、小型特殊免許の条件(全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、最高速度15km/h以下)を満たさない場合は、大型特殊免許が必要になります。
高さには例外があり、安全キャブや安全フレーム付きトラクターは、2.8m以下となっています。安全キャブや安全フレームは、事故や転倒時に運転者を保護する為の安全域のことです。
取得可能な年齢は、普通自動車が18歳以上、原付自転車免許と小型特殊免許は16歳以上です。これから普通自動車免許を取得する場合は、可能であればMTを選択することをおすすめします。
大型車両を「けん引」するときに必要な免許
トレーラーやコンバインなど750kgを超える大型の農機具をけん引するときに必要なのが、けん引免許です。750kgを超えない場合や故障した車両をロープなどでけん引する場合は、けん引免許は必要ありません。
2020年に規制が緩和されたことにより、農耕作業用トレーラをけん引するトラクターも公道走行が可能になりました。
注意しておきたいのが、750kgというのが「車両総重量」だということです。けん引する車両と積載物が合わせて750kgを超える場合は、けん引免許が必要となります。また、けん引する車が大型特殊自動車の場合には、大型特殊免許も必要です。
大型車両を乗せて運転するなら「大型・中型免許」
けん引ではなく、大型トラックを使って大型車両や収穫物を運搬する場合は大型免許、中型の免許が必要です。
中型免許は、普通免許より大型の車両(車両総重量が11t未満、最大積載量6.5t未満、乗車定員29人以下)の運転が可能です。大型免許は、中型の条件より大きな車両(車両総重量が11t以上、最大積載量6.5t以上、乗車定員30人以上)の運転が可能です。
大規模な農業を営んでいる方は農耕車両などを運ぶためにトラックを使うため、大型・中型免許を取得している場合が多いでしょう。
小型から大型まで、それぞれの免許の取得方法と金額
ここでは主な取得方法や条件、金額について説明します。免許取得にかかる金額は、おおまかな目安です。
小型特殊免許
運転免許(原付免許を除く)があれば新たに取得する必要はありませんが、取得する場合は16歳以上、視力は両目0.5以上などの条件があります。免許試験場、免許センターで適性検査・学科試験・講習を受け、金額は3,500円程度です。
大型特殊免許
18歳以上、両目で0.7以上、片目で0.3以上、信号機の色別ができるなどの条件をクリアしている必要があります。
教習所の料金は、普通免許を取得している場合で10万円程度、取得していない場合は20万円程度かかります。免許試験場等で直接試験を受ける場合は6,000円程度です。
けん引免許
18歳以上、視力が両目0.8以上、片目0.5以上で、深視力検査をクリアし、二種、大型、中型、準中型、普通、大型特殊免許のいずれかの運転免許を受けている必要があります。
普通免許を所持していれば、免許試験場等で試験を受けると6,000円程度、教習所に通ってから試験を受けると14万円程度で取得できます。
農耕車限定の場合
大型特殊免許の取得に際し、教習所に通うのは費用がかかり、いきなり試験を受けるのは難易度が高いとされます。しかし、大型特殊免許とけん引免許は農耕車限定であれば、JAや農業大学校で数千~数万円と比較的安価に取得できます。農耕車限定の大型特殊免許やけん引免許を取得するのは、この方法が一般的です。
大型・中型免許
どちらの免許も視力は両目0.8以上、片目0.5以上で、視力検査をクリアする必要があります。教習所に行く場合の金額は、中型免許が20万円前後、大型免許が30万円以上かかります。
金額は、あくまでおおまかな目安です。所持している免許や教習所、地域によって変わりますので事前に確認をしましょう。
トラクターを運転するときのチェックポイント
①灯火器類は見えているか
灯火器類は、前照灯(ヘッドランプ)・ウィンカー・車幅灯(スモールランプ)・バックランプ・尾灯(テールランプ)・ブレーキランプ・後部反射器(リフレクター)があり、作業機を装着した状態で外側から見えている必要があります。
番号灯(ライセンスランプ)は、大型特殊自動車のみ必要です。作業機を取り付けた状態でも外側から見えるか確認しましょう。
見えない場合は、別に設置する必要があります。全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、最高速度15km/h以下の農耕トラクターの場合は、車幅灯、尾灯、バックランプ、ブレーキランプの取付義務はありません。
灯火器類が見えていても、農作業期の取付位置が作業機の端から40cmを超える場合は作業機の両端に反射器を設置する、保安上の制限付き自動車だと示す標識を後部の見えやすい位置に表示する必要があります。
②車両幅を確認
小型特殊自動車のトラクターは、幅1.7mを超えると、反射器(前側白色、後ろ側赤色)・サイドミラー(左側)・標識(後ろ側)を付けなければなりません。
農作業機を装着した状態で幅が2.5mを超える場合には、農道以外なら道路管理者から特殊車両通行許可を得る必要があります。道路管理者とは、国道の場合は地方整備局、都道府県道の場合は各都道府県、市町村道の場合は各市町村です。
農作業機の端がわかるように、前側・後ろ側に外側表示板、反射器、灯火器を設置します。保安上の制限付き自動車だと示す標識を付け、運転者席に幅を表示しなければなりません。
③安定性が確認されていない場合15km/h以下で走行
トラクターなどに農作業機を装着した場合には、安定性が変化する為に保安基準(傾斜角度)を満たすことができない可能性があります。
安定性が確認されていない場合は15km/h以下で走行したうえで、保安上の制限付き自動車だと示す標識を付け「運行速度15キロメートル毎時以下」と後ろ側と運転者席に表示します。
安定性が確認された場合は15km/h以下での走行制限はありません。安定性の確認は下記のサイトで確認ができます。
参照:公道走行 - 一般社団法人日本農業機械工業会
④免許を必ず確認!
2019年4月の制度改正に伴い、ロータリー等の直装型作業機を装着したトラクターの公道走行が可能となりました。しかし、それぞれの免許によって運転可能なトラクターは異なりますので、必ず確認しておきましょう。
普通免許と小型特殊免許で公道を運転可能なトラクターは、全長4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下(安全キャブや安全フレーム付きは2.8m以下)最高速度15km/h以下の条件を全て満たした場合となっています。
この条件を超える場合は、公道の走行には大型特殊免許が必要で、車検も必要になります。
すべてクリアしたら、さあトラクターを運転しよう!
チェックポイントをすべてクリアしたら運転が可能です。制度改正に伴い緩和されたとはいえ、取得している免許で運転が可能か、しっかりと確認しましょう。知らずに公道を走行した場合には、取り締まりを受ける可能性があります。
新たに免許を取得するには、費用がかかります。お手持ちのトラクターが大きすぎて免許の取得に高額な費用がかかる場合は、買い替えを検討してみても良いでしょう。
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株式会社K・ライズホールディングス 営業本部
桑原 翔
(Kuwahara Tsubasa)
1987年4月生まれ、趣味はパソコンいじりと音楽全般。専門商社の営業職とSaaS(クラウド)のカスタマーサクセスやマーケティング業務を経て、K・ライズホールディングスに入社。営業本部所属で、主に「國丸」「あぐり家」「RiZ」を担当し、各事業のサイトのディレクションやオンラインマーケティングのほか、オフラインマーケティングを担当。